先制医療研究センターは、本学の建学の精神に則り、先駆的医療技術等の創出とその普及に関する事業を通じて、産学(官)連携を図りながら、優れた「人間力」を備えた医療従事者等の育成並びに地域社会への貢献を目的に掲げ、全学的な附置機関の一つとして平成23年度に設立されました。
平成26年度からは、前年度までに準備してきた事業内容の具現化への手段として、本研究センター内に寄附講座(医療技能開発学寄附講座)を設置しました。ここに、専任の寄附講座助教(常勤)2名及び准教授等(非常勤)4名を任用し、加えて、歯学部からも4名の兼任教員を配置して、実践的な運営体制の整備が適いました。
これに基づき、歯科医師等の医療従事者における専門性の高い医療技術の修得を支援する研修事業及びキャリアパス形成事業(技術研修事業等の運営)、国際医療事業(国際認証取得への支援及びコンサルタント事業)に関連する研究開発等を実施しています。
平成27年度からは、別に寄附講座(積水化学工業再生医療機器開発寄附講座)を増設し、再生医療機器の開発に関する研究事業を開始しました。
一方、平成26年度においては、地域医療への協力体制作りも精力的に進め、その基礎として、本学と一般社団法人・横浜市歯科医師会とは、災害対策、医療の相互支援、学術研究及び教育等を連携事項とする包括連携協定を締結し、地域社会の発展の寄与に向けた活動を開始しています。
まずはその先駆けとして、平成26年度文部科学省私立大学等改革総合支援事業において採択を受けた「歯科診療情報の管理・運用システム拠点の整備事業」を完了させました。これは、既述の包括連携協定を基盤として、災害時において本学と地域歯科医師会とが診療情報を共有し、被災者の身元確認等の災害対策に活用することを基本とするものです。昨年の9月24日には、横浜市歯科医師会、神奈川県警察本部、各報道機関等を招いて、本システム運用のキックオフ説明会を開催し、地域社会への周知を図ることが適いました。
更に、平成27年度においては、同様の文科省支援事業として「地域の死因究明体制の充実に資する死後画像診断及び身元確認支援システム」が引き続きに採択され、これに基づき、平成27年度中に医用CT装置を設置し、地域における平時及び災害時に活用される死後画像診断拠点としての運用に発展しました。
その他に、平成26年度より、本学の仏教系教育研究機関としての特長を活かし、大本山總持寺との連携に基づき、曹洞宗修行僧等を対象とした『終末期医療を支援する臨床宗教師等の育成事業』を開始しました。
本事業は、終末期医療に限らず、宗教者と医療者が一体となって行う「苦痛緩和と癒しの支援活動」を目指しているもので、人々の普段の生活の相談や悩みの支援業務に取組むことを最重要の課題として、修行僧における傾聴やコミュニケーション能力等の具備並びに向上を目標に取り組んでいます。
平成26年度及び同27年度共に26名(合計52名)の修行僧が、日々の厳しい修行の合間に本研修を受講し、それぞれが無事に研修課程を修了しております。加えて、関連する高名な僧侶や研究者を招き、一般の方も参加できるシンポジウム及び講演会を開催しており、地域社会における理解が深まるよう努めています。
また、最近では、臨床宗教師の育成に関する社会からの要求や関心が高まったことから、関連する報道等が増えたほか、同事業の中心的機関である東北大学実践宗教学寄附講座が主体となって、臨床宗教師の資格化等を目指す組織作りが始まっています。これには、同育成事業の運営を始めている本学を含めた7大学(龍谷大学、高野山大学、種智院大学、武蔵野大学、上智大学、愛知学院大学、鶴見大学)が加わり、認定機関としての構成を為しています。
今後も同育成事業の発展が望まれることから、臨床宗教師としての活動現場の確保など、より実践的な課題への対応が求められることでしょう。