総持学園の教育の根幹をなす建学の精神「大覚円成 報恩行持」。
これを簡潔で、明解な現代的表現を用い、
より分かりやすくするための“翻訳”作業が完了しました。
新たな表現は「感謝を忘れず 真人(ひと)となる」
「感謝のこころ 育んで いのち輝く 人となる」の二つです。
そこで鶴見大学・同短期大学部の木村清孝学長、
大学附属中学校・高等学校の中川光憲校長、
短期大学部附属三松幼稚園の黒田眞喜子園長の“トップ3人”に、
現代的表現の意義や本学の将来像などを語っていただきました。

─本学は、曹洞宗の大本山總持寺が設立した学校で、禅の教えに基づく「大覚円成 報恩行持」を建学の精神に掲げています。初めに、その成り立ちから説明していただけますか。

木村 建学の精神「大覚円成 報恩行持」は、本学の学祖であり、初代学園長・校長をつとめた中根環堂先生が、本山を開かれた瑩山禅師の教えをもとに、大正14年に定められた、と聞いています。
 以来、今日まで80有余年にわたり、本学の教育を貫くバックボーンとして、こころ豊かで、知性に優れた人材を育てる人間教育に大きな役割を果たしています。
 ちなみに「大覚円成 報恩行持」には、「人として生まれたことに感謝し、人様のお役に立てる正しい生活を送ろう」といった意味も含まれます。

朝礼の場で「大覚円成 報恩行持」を三唱

─中川校長と黒田園長のおふたりは、「大覚円成 報恩行持」に懐かしい思い出があるそうですね。

黒田 はい。私は昭和40年代の初めに、本学短大の保育科の学生でした。その当時は朝礼があって、最後は建学の精神の斉唱で締めくくります。それで毎回、当時学監で後に学長の三輪全龍先生の後について、「大覚円成 報恩行持」を大きな声で、3回ずつ唱えさせられました。お陰で、今も建学の精神が体に染みついています(笑)。
中川 それは私も同じです。中学・高校でも、以前は朝礼の際に、全員で「大覚円成 報恩行持」を唱えていました。ただ、三唱の短大に比べると、ずっと回数が多く、確か、繰り返し7回は唱えたと思いますよ(笑)。 ─ところで、今回なぜ建学の精神を現代的な表現にすることになったのですか。
木村 本学では現在、学園の活性化と質的な向上をめざし、大学と附属中学・高校、附属幼稚園のすべてで、再構築の取り組みを進めています。
 その過程で、建学の精神である「大覚円成 報恩行持」の表現が難解で、今の学生には理解しにくい。もっと簡明で、親しみやすい現代的な表現にできないか、との議論があり、私が「大覚円成 報恩行持」の現代的表現の原案作りを担当することになったわけです。
「大覚円成 報恩行持」は、本山開祖の瑩山禅師の思想がベースになっています。そこで、まず禅師の著作物を読み直し、また作成者である中根先生の思いも推察しながら、“翻訳”作業を進めました。その結果、「さとりまどかに 恩に報いん」など8つの候補を作り、学内選考を経て、最終的に(1)「いのち輝け 感謝と奉仕」(2)「感謝を忘れず 真人となる」(3)「感謝のこころ 育んで いのち輝く 人となる」の3つに候補作を絞りました。そしてこれを基に、中学・高校と大学でアンケート調査を行いました。

─その結果はどうなりましたか。

中川 中学・高校では、各クラスに2人ずついる宗教行事を担当する「行持委員」の生徒数十人を対象に、アンケートを取ったところ、一番人気が高かったのが、②の「感謝を忘れず 真人となる」で、次が③の「感謝のこころ 育んで いのち輝く 人となる」でした。
木村 大学では、宗教学を受講している1年生を対象に、アンケートを行いましたが、結果は中学・高校とほぼ同じでした。これを受けて、学内でさらに議論を重ね、昨秋の理事会で最終的に「感謝を忘れず 真人となる」と「感謝のこころ 育んで いのち輝く 人となる」の二つを採用することに決定しました。

キーワードは 「感謝」「いのち」「人」

─建学の精神を現代語に言い換える際に、特に留意した点はどんなところですか。

木村 まず「大覚円成 報恩行持」の本質から外れないことを心がけ、そのために「感謝」「いのち」「人」をキーワードにして、現代的表現を試みました。また、若い人好みの表現やフィーリングも大切にしました。例えば、その一つが「真人」です。ただの「人」よりは、深みがあるし、フィーリング的にも面白いと考え、この表現にしました。
黒田 とても素晴らしい表現ですよね。実は私は長い間「大覚円成」の意味がよく分からず、もやもやした気分でした。ところが、今回の表現で意味がよく分かった。胸にストンと落ちて、とてもすっきりしました(笑)。

─新しい現代的表現が出来たわけですが、今後どのような形で建学の精神の普及、浸透を図っていかれるのですか。

木村 基本的には、これまでの「大覚円成 報恩行持」を柱にして、併せて現代的表現も使っていく。もちろん、単独で使っても構いませんが、併用方式で普及を図るのが最も望ましいのではないか、と私は考えています。
黒田 三松幼稚園では、「大覚円成 報恩行持」の言葉こそ使いませんが、これまでも感謝の心や命の大切さなど、建学の精神にのっとった教育に力を入れてきました。  今回の表現には、感謝や命といった言葉が具体的に盛り込まれていて、まさに「我が意を得たり」といった感じです。この表現なら、園児たちの心にも、抵抗なく溶け込んでいくでしょうし、今後はこれを活用して、保護者の皆様にも本学の建学の精神をPRしたいと思います。

現代的表現を活用、 人間力養う教育を

─中学・高校ではいかがですか。

中川 中学・高校の各教室には、「大覚円成 報恩行持」の言葉が掲げてあり、花まつりや成道会(お釈迦様が悟りを開いた日)、涅槃会(お釈迦様が亡くなった日)といった宗教行事の折などに、建学精神の意味するところを、生徒たちに説いてきました。  しかし、中学生・高校生には難し過ぎて、正直なところ、われわれ教える側もひと苦労でした。その点、今回の表現は、非常に分かりやすい上に、リズム感もある。今後はこれを活用して、人間力を養う教育を推進したいと思います。
木村 それはいいですね。大学では、仏教文化研究所の活動と学内での宗教行事、それに宗教学の授業。この3つを柱にして、建学の精神の普及、浸透を積極的に図っていく。また名刺などにも刷り込み、本学の誇る建学の精神を大いにPRしたいと考えています。

─最後に大学・短期大学部、附属中学・高校、附属三松幼稚園それぞの将来展望を聞かせてください。

黒田 先ほどお話したように、三松幼稚園は建学の精神に基づき、命の大切さや感謝の心を培う保育・教育に力を入れています。そのため、幼児坐禅なども取り入れています。  ただ、本学には附属の小学校がありません。それで卒園後の子供たちは鶴見を離れて行く。この子たちをどのようにして、再び附属の中学・高校に呼び戻すか。それが課題であり、卒園児にはぜひまた鶴見に帰って来て欲しい。幼稚園としては、それを強く願っています。
木村 そのためには幼稚園と中学・高校、大学の連携が欠かせません。今後はこれまで以上に3者で協力し合い、いろいろと知恵を絞っていきましょう。
中川 中学・高校の将来像ですが、私たちはまず6年間の中・高一貫教育にしっかり取り組みたい。そして、一貫教育のメリットを最大限生かして、頭と心と体のバランスの取れた人間教育をめざしたいと考えています。その一環として、中1・2、中3・高1、高2・3をワンセットにした3ステージ制の新しい教育システムも導入しました。

─大学・短期大学部では?

木村 幼稚園や中学・高校の皆さんが頑張っているし、大学も負けてはいられません。短大・文学部・歯学部が共存する本学の特色を生かし、横のつながりを強化しながら、魅力ある学園の新生へ向けて、より一層精進していきたいと思います。

─ありがとうございました。

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