フレッシュな新入生を迎え、新学期がスタートした鶴見大学。
この4月からトップが交代し、本学の名誉教授で、
短期大学部の学部長や附属中学・高等学校長を歴任した伊藤克子先生が、
新学長に就任しました。本学の長い歴史の中で、初の女性学長の誕生です。
少子化の影響で、大学進学年齢の18歳人口が減り続け、
大学を取り巻く環境は厳しさを増すばかりです。
そうした中で、鶴見大学の将来展望をどのように描くのか。
大学のトップに就任した伊藤新学長に、今後の抱負などを聞きました。

─学長就任、おめでとうございます。初めに今の率直な感想を聞かせてください。

伊藤 最初に学長のお話をいただいた時は、あまりにも突然、想定外のことで、本当にびっくりしました。
 実を言うと、そろそろ故郷の岩手県・盛岡へ帰り、「第2の人生はそちらで」と準備を進めていた矢先だったんです。それに加え、私は教員として本学に40数年勤務しましたが、歴代の学長先生のように、仏教を専門的に研究した経験もなければ、僧籍もありません。しかも「女性」です。
 それで何度かお断りしたのですが、よくよく考えてみると、本学の母体である曹洞宗の大本山・總持寺を開かれた瑩山禅師は、鎌倉時代という封建社会にありながら、決して女性を卑下せず、むしろ積極的に登用された方でした。 そこで、もしかしたら、これは遠い時を超えた瑩山禅師の思し召しなのかも知れないと考え直し、学長就任をお引き受けしました。
 とは言え、大学のトップという大変な重責を担ったわけで、正直、不安はありますし、毎日が緊張の連続です。

「待ったなし」の大学改革

─新学長として、真っ先にやってみたいことは何ですか。

伊藤 「やってみたい」というより、「やらなければいけない」課題が山積みです。
 例えば、国の方針に沿った大学改革です。昨年から文教政策が大きく変わり、世界水準に比べて、相当に立ち遅れている日本の大学のレベルアップを図るため、文部科学省によって「大学改革実行プラン」が実施に移されました。 ここには様々な改革案が、こと細かに列挙してあり、鶴見大学としても、このプランに沿った改革を急ぎ、成果を上げなければなりません。そうでないと、国からの支援が受けられなくなるからです。大学改革は「待ったなし」の最優先課題なのです。
 それと教育内容を見直し、すべての学部・学科において、よりレベルの高い教育を実践していくこと。これも急がなければいけない課題です。
 一口にレベルの高い教育と言っても、その実現はたやすいことではありません。まずは教員の皆さんに大いに知恵と汗を絞っていただき、授業の質を高め、より魅力的なものに変えていく。そこから始めていきたいと考えています。 これに関連して、学生の皆さんにもお願いというか、注文があります。本学の学生は、男子も女子も総じて礼儀正しく、素直です。これは人として素晴らしいことですが、その半面で、積極性や野生味に欠ける嫌いがあり、私はその点に少し、物足りなさを感じてきました。
 こうしたことは勉学面にも言えることで、本学の学生には、もっと向学心をたぎらせ、学ぶことに大いに貪欲になって欲しい。それが学長としての私の強い願いです。

次の10年へ向け、新教育目標を策定

─鶴見大学は昨年度、大学が創立50周年、短期大学部が創立60周年を迎え、祝賀と記念行事を催しました。それに続き、本年度は大学をはじめ、附属中学・高校から幼稚園までを運営する学校法人総持学園が創立90周年を迎えます。
 これを記念して、大学としては何か新しい事業を予定しているのでしょうか。

伊藤 一番大きな事業としては、大学と中学・高校、幼稚園のそれぞれが、次の10年へ向けて、新たな教育目標を策定することになっています。
 大学の方は、学長である私が中心になって、教育目標づくりを進めますが、その中心には、本学の建学の精神である「大覚円成 報恩行持」を据えるつもりです。
 具体的には、前学長の木村清孝先生が作成された現代語訳の一つ「感謝を忘れず 真人(ひと)となる」の中にある“真人づくり”。これを鶴見大学がめざす第一の教育目標として、高く掲げたい。
 木村先生もおっしゃっていますが、“真人”とは、単なる知識ではなく、豊かな感性と知性に裏打ちされ、自立的で創造力に富んだ“総合的な人間力”の持ち主のことなんですね。本学がそのような“真人”を育成する教育空間として、永続的に発展していく。そうなれば本当に素晴らしいと思います。

「女の視点」も大切に。“女性コンビ”で独自カラーも

─本学始まって以来の初の女性学長ということで、その手腕に関心と期待が高まっています。女性の視点から、特に取り組んでみたいようなことはありますか。

伊藤 私はふだんから「女性である」ことを余り意識したことがないので、特にそのようなことは考えていません。
 ただ、女性の感性とか直感、慈しみの心や優しさ、しなやかさ…。そういったものは、確かにあると思うんです。ですから、大学の舵取りをしていく上で、そうした女性の特性のようなものは大事にしていきたいですね。
 副学長は前田伸子先生ですので、期せずして、大学のトップふたりが女性になりました。これからは“女性コンビ”でいろいろと話し合い、知恵を絞りながら、男性学長の時代とはひと味違う、独自の路線も打ち出していきたいな、と考えています。

禅の教えに基づく「人間教育」を強化

─少子化の流れが止まらず、学生の確保をめぐって、大学間の競争が激化しています。そのような中で、鶴見大学の特色、魅力づくりについては、どのようにお考えでしょうか。

伊藤 本学の最大の特色の一つは、曹洞宗の大本山である總持寺が設立した大学である、という点です。しかも、大学のキャンパスの大半が本山の境内の中にあり、大学と本山は文字通り一体的な関係にあります。
 こうした特性を生かして、本学では仏教、特に禅の教えに基づき、こころ豊かで、知育に優れた人材を育てる人間教育に力を注いできました。
 今年はちょうど総持学園の創立90周年でもありますし、この機会に、建学の原点にもう一度立ち返ってみたい。
 そして、禅の教えに基づく人間教育という本学の特色をさらに強化して、先行きが不透明な今の時代の中にあっても、人への思いやりや優しさを併せ持ちながら、たくましく生きていける「人間力」を養う教育の徹底を図っていきたいと考えています。
 そのためにも、学生の皆さんには、新入生を対象に毎年5月に行われる「一泊参禅会」だけでなく、年間を通して学内で催される様々な宗教行持に、もっと積極的に参加して欲しいと思います。

キャンパスの風通しを良くし、学内交流を活発に

─最後に新学長から、鶴見大学に集うすべての学生、教職員に向けて、熱いメッセージをお願いします。

伊藤 本学は文学部に歯学部、短期大学部という異色の学部・学科が、同じキャンパス内に“同居”する、全国的にも大変ユニークな大学です。
 ただ残念なことに、私が見る限り、まだそれぞれの垣根が高く、学部・学科の枠を超えた交流が活発であるとは言えません。これは大変にもったいないことです。
 実は、私が体育の教員をしていた時代には、「昭和ハイティーンの会」というものがあり、文・歯・短をこえて、教員、職員が集まっては、交流を深めていました。そこはとてもフランクな場で、お酒の力も借りながら、よく大学の将来像などについても、自由闊達に意見を交換し合ったものです。
 今、そんな昔の出来事を思い出しながら、何とか学部・学科の垣根を取り払い、学生や教職員同士、あるいは学生と教職員のヨコ、タテの交流を活発にできないか。そんなことを考えています。
 キャンパスの風通しが良くなり、異色の学部・学科同士の交流や融合が進めば、本学がさらに魅力的な大学に生まれ変わることも、決して夢ではありません。
 全学の皆さん、ぜひ共に手を携えて頑張りましょう。

 

伊藤克子学長略歴

学歴
昭和42年3月 お茶の水女子大学文教育学部教育学科卒業
職歴
昭和42年6月 鶴見女子大学一般教育等副手(体育)(昭和45年6月迄)
昭和45年6月 鶴見女子短期大学部一般教育等講師(体育)(昭和50年3月迄)
昭和50年4月 鶴見大学女子短期大学部一般教育等助教授(体育)(昭和57年3月迄)
昭和57年4月 鶴見大学女子短期大学部一般教育等(総合教育)教授(体育)(平成21年3月迄)
平成16年4月 鶴見大学女子短期大学部総合教育主任就任(平成10年3月迄)
平成12年4月 鶴見大学短期大学部長就任(平成17年3月迄)
平成12年4月 学校法人総持学園理事・評議員就任(平成17年3月迄)
平成17年4月 学校法人総持学園評議員就任(平成18年3月迄)
平成18年4月 鶴見女子高等学校・鶴見女子中学校校長就任(平成22年3月迄)
平成18年4月 学校法人総持学園理事・評議員就任(平成22年3月迄)
平成22年4月 鶴見大学名誉教授
平成26年4月 鶴見大学・鶴見大学短期大学部学長就任(現在に至る)
平成26年4月 学校法人総持学園理事・評議員就任(現在に至る)
平成26年4月 学校法人総持学園常務理事就任(現在に至る)
賞罰
平成22年10月 文部科学大臣表彰(教育功労者表彰)受賞

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