文学部・短期大学部同窓会会長 浅田美知子
鶴見大学創立50周年、鶴見大学短期大学部創立60周年、誠におめでとうございます。
昭和28年に最初に創設された鶴見女子短期大学国文科は鶴見女子高校の一室を仮教室として発足し、また昭和38年に設立された鶴見女子大学文学部の当時の校舎は現在のキャンパスから離れた丘の上のこじんまりとした木造二階建ての荒立校舎でした。文学部英米文学科の4期生であった私は一年間だけでしたが、今でも荒立校舎で受けた授業や先生との交流が木造の優しい日差しとともに思い出されます。
やがて、各学科とも現在のキャンパスに順次新校舎が建てられ、短期大学、文学部とも学科が増設され、半世紀を超えた現在、設立当初と比べると教育内容や校舎、学生数の規模が大きく発展を遂げてきたことは、現在の鶴見大学が物語っていることです。
女子大学から男女共学への変遷もありました。
女子短大第一年の入学案内に、当時の中根環堂学長が「本学の特色」として、「本学園は男女共学を理想とはしまするが、我が日本に於いては、時期尚早と信じまするので、男女共学を避けて女子短期大学を設立し、女性には女性に応はしき女性教育を施し、気品高き、実際に役立つ女性を陶治するのであります。(以下省略)」と記していらっしゃいます。
この機に際して、この大学で現在学んでいる人、そして卒業生のどれほどの人が鶴見大学が創設された由来を知るのだろうかという思いに駆られました。ここに学ぶ学生も卒業生もその由来を当然知るべきことと思いますが、もしかすると現在はそれが認識の外にある方も多くいらっしゃるのかもしれないと思うのです。
しかし、ご自分の学びの場所をよく知ることはご自分の存在を確認する一つの大きな手立てになることですので、ここで改めて見つめてみたいと思いました。
それは『鶴見大学の歩み』(当時の三輪全龍学長の下で昭和54年刊行)の中に記されています。その由来は釈尊からの正伝第五十四代の法孫であり、曹洞宗の太祖大師と仰がれ總持寺を開山した瑩山禅師の教化の「人間の自覚と向上」にあるとされています。
教育の中でそれを実現するために、先ずは女子教育の下、最初に大正14年、鶴見高等女学校が創立され、以降、女子短期大学、女子大学が設立されてきたという歴史を見てきました。
しかしやがて、女子のみへの教育は昭和48年に終了し、鶴見女子大学が鶴見大学として、男女を問わない教育へと変わっていったのですが、ここに全て、釈尊、道元禅師から瑩山禅師へと引き継がれた「人間の真実の生き方、ほんとうの自己の在り方を確認して、衆生済度する」という本来の目的に叶うことになったのです。つまり、初期に女子教育に徹したのは、先の中根環堂学長の言葉にありましたように、その当時劣っていた女子教育を男子教育に近づけるためでしたが、社会的にも女子の向上を見た時代の到来の中で、男女を問わず人間そのものの教育を目指す本来の目的を達成するに至ったということだと思います。
そして、この経緯を知れば建学の精神として、『大覚円成 報恩行持』(感謝を忘れず、真人となる)が示されていることがよく理解されると思います。
ますますの鶴見大学のご発展と、他に負けない鶴見大学の建学の精神を誇りにして学生と卒業生の皆様が社会で御活躍し、良い人生をお過ごしになられることを祈念して祝辞とさせていただきます。
歯学部同窓会会長 村田 憙信
このたび鶴見大学創立50周年、鶴見大学短期大学部創立60周年という記念すべき年を迎えられましたことを、歯学部同窓会を代表して心よりお祝い申し上げます。
昭和28年に総持学園の創立30周年記念事業として、多年の願いであった「大学」への飛躍の第一歩となる鶴見女子短期大学国文科が誕生した経緯は、学園の沿革資料の中で知るところでありますが、戦後の混乱から立ち直りはじめた時期に独自の校舎もなく高校の一部を共用しての出発であったということからも、その当時のご苦労が今日の想像を絶するものであったことと思います。さらにその後、短期大学創設から10年目の昭和38年に、峨山禅師六百回大遠忌記念事業として鶴見女子大学が開設に至ったことは驚くべきことといえます。短期大学の初代学長となられた中根環堂先生が、当時の入学案内で学園の将来について述べられた中に、学園は男女共学を理想とするが時期尚早と考えて女子短期大学を設立したことや、将来は4年制大学を建設し京浜間に誇るべき学園を実現することを期しているということがありますが、その将来見取り図の通りに昭和45年に鶴見女子大学歯学部が設立された3年後に歯学部が男子学生を募集することとなり、鶴見大学に名称変更して男女共学の大学となりました。
私は昭和48年に共学となった鶴見大学歯学部に入学しましたが、当時を思い起こすとき実に感慨無量のものがあります。今日では歯学部以外の各学部、学科も共学となり名実ともに共学の鶴見大学となりましたが、共学化の当初は男子学生の受け入れ態勢が整わず笑い話のようなこともありました。
昭和51年に歯学部の第1期生が卒業するとともに歯学部同窓会が誕生し、それ以来、先輩同窓会である文学部短期大学部同窓会と親しく交流をさせていただいてきましたが、現在は大学から大学会館の中に隣合せて同窓会室を提供していただき一層緊密な交流をさせていただいております。
文学部、短期大学部におかれましては、今日まで4万名余の卒業生を世に送り出しているとお聞きしております。創設期にめざした女子の高等教育を通しての社会的地位の向上は、今日まさに男女共同参画社会、男女雇用機会均等法などにより飛躍的な進歩を見せております。戦後の混乱期から復興期、さらに高度成長の時代、そして現在まで、文学部、短期大学部卒業生の多くの皆様が社会の様々な分野において活躍をされていることもお聞きしております。
先年、歯学部も創立40周年を迎え、同窓会もまもなく40周年を迎えます。現在は5千名を超える卒業生が歯科医師として、臨床において、教育において、また行政職として全国各地で活躍をしておりますが、その中で4割以上が女子の卒業生となっています。そのことからも女子の高等教育機関としての鶴見大学の原点は、歯学部においてもしっかりと保たれているといえます。その一方、男女共学を理想とした学園の原点に悖ることの無いよう男子卒業生の健闘も望まれるところです。
現在わが国の大学、短期大学は、少子化と長期にわたる景気低迷の中で、受験者や入学者の減少など難しい問題を抱えております。私たち同窓会は文学部短期大学部同窓会とともに平成21年にスタートした学園再構築の取り組みにもその一員として参加させていただき、また大学と連携した事業活動も展開をしております。この記念すべき節目の年に当たり大学のさらなる発展に向けて微力ながら尽力いたしますことをお誓い申し上げお祝いの言葉とさせていただきます。