風薫る5月─。入学式も終わり、今年も新学期がスタートしました。
大本山・總持寺のふところに抱かれ、若葉が輝く本学のキャンパスには、
初めての大学生活に胸ふくらませる新入生たちのフレッシュな姿も目立ちます。
中学・高校とは異なり、自由で自主性が尊重される大学生活。
キャンパスライフを楽しく、豊かなものにするため、
学生たちはどのような日々を過ごしているのか。
“鶴大生の一日”を追いました。

密度濃い「臨床実習」 国家試験突破をめざす

歯学部歯学科6年 清水 賢さん

 清水さんの一日は、朝7時の起床から始まる。朝食の後、8時には自宅を出て、大学へ。ふだんはバス通学だが、天気が良い日は自転車を利用する。これなら渋滞もなく、バスの半分の20分で大学に着く。
 午前9時、歯学部附属病院で行われる臨床実習へ。国家試験対策が本格的に始まる6月までは、教室での講義はなく、臨床実習を通して、良き歯科医になるための基礎を学ぶ。これまでの模型による授業とは違い、実際の患者さん相手に歯科治療を行うため、毎日が緊張の連続だ。
 「でも、すごくやり甲斐がある。自分で作った入れ歯の出来が良く、患者さんから『毎日、おいしく御飯が食べられる。ありがとう』と感謝された時は、最高にうれしかった。立派な附属病院を持ち、他大学に比べて、臨床実習が充実している鶴見大学を選んで、本当に良かったと思います」と清水さん。
 密度の濃い臨床実習は、昼休みをはさんで午後も続き、夕刻の4時30分にやっと終了。しかし、これで終わりではない。実習の後は、入れ歯や金属のかぶせ物など、歯の治療に欠かせない技工物の製作の時間。担当する患者さんの症状に合わせ、技工物を一つひとつ丹念に作っていく。これも結構、骨の折れる作業だ。 午後8時、技工物づくりが終了。既に日はとっぷりと暮れ、お腹も鳴り始めた。大学を出て、学友たちとネオン輝く鶴見の町へ。飲食店で食事をとり、一日の疲れをいやす。自宅に帰るのは、毎晩10時前後。その後も、日によっては翌日の治療の予習に励み、ベッドに入るのは、午前零時前だ。歯学部の学生は、とにかく学業に忙しい。
 清水さんは勉学の一方で、クラブ活動も存分に楽しんできた。入学早々、スキー部に入部。冬・春の雪山での合宿や各種の競技会に参加して、大好きなスキーに青春の血をたぎらせた。部活は一応4年生で“引退”し、今は学業に専念の毎日だが、「スキー部のおかげで、他大学との交流の輪が広がり、友達もたくさんできた。部活は間違いなく、僕のキャンパスライフを豊かにしてくれました」
 横浜市内で歯科医院を開業する父親の姿にあこがれて、同じ歯科医の道を選択した清水さん。鶴見大学での学生生活も、残り1年を切ったが、大学を卒業後は、より高度な知識と技量をもつ歯科医をめざして、さらに大学院に進学の予定だ。
ただ、その前の来年2月には、最後の難関である国家試験が待ち受ける。そこに照準を定め、「何としても一発合格を!」と意気込む清水さん。最後のキャンパスライフは、猛勉強一色に染まりそうだ。

授業・部活・アルバイトを軸に 楽しく、充実した学生生活

文学部日本文学科4年 秋山雪歌さん

 キャンパスを彩る桜とともに、最上級生になった秋山さん。今は授業とクラブ活動とアルバイト。この3つを軸に、毎日、充実した学生生活を送っている。
 朝は8時に起床。10時40分からの2限目の授業に間に合うよう、9時30分には横浜市磯子区の家を出る。バスと電車を乗り継ぎ、約1時間で大学に到着。大好きな国文学講読の授業を受ける。「平家物語など古典文学を題材に、授業が進むので、とても面白い。歴史の流れや事件の背景などもよく分かり、すごく勉強になります」
 昼食は、混み合う大学食堂を避け、空き教室で。母親の心づくしのお弁当に舌鼓を打ちながら、友人たちとワイワイガヤガヤ。心がなごむひと時だ。
 昼食が済むと、次週に行われる演習発表のための資料を作成するため、図書館へ。静かな環境の中で、資料づくりは順調に進む。秋山さんにとって、大学図書館はお気に入りスポットの一つだ。
 「公共の図書館に比べて、本の数が格段に多いし、勉強するのにも最適の場所。空き時間があると、しょっちゅう、ここへ来るんです」
 午後2時40分からは、「近世文学講義Ⅰ」の授業。江戸時代の俳人・松尾芭蕉の「奥の細道」についての講義に、じっくり耳を傾ける。
 4時10分、授業が終了。次はクラブ活動の時間だ。急ぎ足で、所属する「書道部」の部屋へ。書は高校時代から始め、今も様々な書体の字に挑戦する。「筆を持つと心が静まり、とても気持ちがいい。書けば書くほど、書の奥深さを知らされ、魅了されていきます」と秋山さん。
 この日は、アルバイトのため、部活を早めに切り上げ、午後6時前に大学を出る。バイト先は、地元の磯子区・洋光台にあるスーパー。大学に入学して早々の4月から働き始め、ここでのバイト歴は、はや丸3年になる。
アルバイトは、火、木、金曜日の週3日。午後7時から10時30分まで、主にレジなどを担当する。大ベテランだけに、今では店側の信頼も厚く、お客様の相談係のような大事な仕事も任されるそうだ。
 これまでの大学生活を通し、秋山さんには忘れられない学校行事がある。新入生を対象に、毎春催される「一泊参禅会」がそれ。「厳粛な雰囲気の中で坐禅を組み、精神統一をする。鶴見大学ならではの、とても新鮮な体験でした」
 就職活動に加え、5月からは教員免許取得のための教育実習も始まり、大学生活は一挙に忙しくなった。卒業後は「学習塾の先生になり、子供たちに勉強を教えたい」と語る秋山さん。夢に向かって、全力で走り始めている。

社会人から転身、歯科衛生士の道へ
学生ボランティアとしても大活躍

短期大学部歯科衛生科2年 太田杏奈さん

 太田さんの歩みは、一風変わっている。
 高校を卒業後、ストレートには大学をめざさず、まず英語の専門学校へ入学。そこで学んだ後、ニュージーランドへ語学留学。帰国してからは国内の自動車会社、さらにはフランスの自動車部品メーカーで、品質エンジニアとして腕をふるっていた。
 そんな中、この先の人生において何をやりたいのか真剣に考え、人の幸せに貢献できる医療系の仕事がしたいと、歯科衛生士になることを決意。自宅に近いことや附属病院での研修制度が整っていることから、短大部の歯科衛生科を進学先に選んだ。
 年齢差のある同級生達との交流にも特に戸惑いはなく、みんなからはお姉さんとして一目置かれ、慕われている。
 歯科衛生科は3年制のうえ、とにかく学ぶことが多い。そのため、連日、授業がびっしり組まれ、学生たちは勉学に追いまくられる。
 例えば、2年生の太田さんの場合、火曜と金曜日を除き、週3日は5時限授業。早朝から夕刻まで、延々と授業が続く。息抜きができるのは、昼休みの1時間だけだ。
 太田さんの平均的な一日を追ってみると─。朝は7時に起床。8時に家を出て、大学へ。9時から1限目の「歯科矯正学」の授業が始まり、その後、5時限目の「微生物学」まで、授業がびっしり。5時50分に、最後の授業が終わる頃は、みなクタクタだ。
 それでも、社会人から転身した太田さんは「会社の仕事に比べれば、今の学生生活の方がずっと楽」と過密スケジュールも全く意に介さない。太田さんは授業の合間をぬって、ボランティアなど様々な活動にも力を注いでいる。 東日本大震災後に立ち上げられた鶴見大学学生ボランティアでは、昨年度の夏、冬、春休みを利用し、宮城県気仙沼市の子どもたちへの学習支援を中心とした活動に取り組んだ。そして、今も学生ボランティアの代表として、毎週水曜日のボランティア定例会のほか、大震災関連の様々な行事の準備のために、精力的に動き回る。
 「ボランティア活動を通して、地域の方をはじめ、たくさんの方々と知り合え、絆が深まった。私自身、教えられることが多く、とても勉強になっています」
また、ボランティア定例会の終了後に、アドバイザーの教員が行っている患者さん宅への「訪問診療」にも自主的に参加。ただ見学するだけだが、診療の様子をつぶさに観察し、自己研鑽につとめている。さらに、週3日は自宅近くの歯科医院で、夜6時から9時までアルバイト。
 「将来は歯科衛生士として独立し、高齢者の口腔衛生の向上に貢献したい。そのためにも、今のうちにしっかりと知識を身に付けておきたいんです」と太田さん。その行動は意欲的で、エネルギーに満ちあふれている。

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