本学は大本山總持寺によって設立された大学で、仏教、特に禅の心にもとづく人間形成を建学の精神としています。この建学の精神に則り、一九九五年に設立されたのが「鶴見大学仏教文化研究所」です。設立の目的は、日本における仏教文化を中心に、広く仏教と文化に関する研究を推進し、学術の発展に寄与することです。
本研究所の活動としては、毎年六月に公開シンポジウムを開催するほか、定例研究会などを行っています。そして、それらの研究成果は『仏教文化研究所紀要』をはじめとする学術誌に掲載しています。また、国際都市横浜の地の利を生かし、一昨年の専任研究員の着任を契機として、国内外の他の研究機関とも協定を結び、国際的視野に立って仏教研究の進展に貢献しつつあります。
ところで、特筆したいことは、昨年までの三年間、大本山總持寺御移転百年に因んで、本研究所としてもさまざまな活動を展開してきたことです。その輝かしい成果として、長年の地道な調査研究にもとづく『住山記 ―総持禅寺開山以来住持之次第―』の刊行、大本山總持寺・神奈川県立歴史博物館との共催による「特別展 曹洞宗大本山總持寺名宝一〇〇選」の開催などが挙げられます。このような成果の発表によって、本研究所は、主に宗門や地域の方々から大きな注目を浴びることとなりました。
なお、上に触れた公開シンポジウムは、本年度は、「死の痛みを超えて―大悲の禅に学ぶ―」と題し、本学グリーフケア研究会の協力を得て、六月九日(土)午後一時三十分から四時三十五分まで、鶴見大学会館2階サブホールにて開催される予定です(入場無料)。どうぞご来場ください。死は恐れるべきものなのでしょうか。残された者は死の悲しみにどう向き合えばよいのでしょうか。今回は、生きていく中でもっとも大切なこれらの問題について、禅の立場を踏まえ、ご一緒に考えてみたいと思います。
また、本研究所が中心的な役割を果たす形で、来る六月三十日(土)、七月一日(日)の両日、本学において日本印度学仏教学会第六十三回学術大会が開催されます。当学会は六十年以上の歴史を有し、国内外の会員数二千二百名に上る、人文社会系では日本最大規模の学会で、世界的なインド思想研究・仏教研究の主要な担い手の一つとなっています。ですから、その学術大会が本学で開催されることは大変光栄なことです。しかし、発表者・参加者を併せると四百名以上の方々が全国から参集される予定で、運営を円滑に進めるのはなかなか大変です。いま、大学を挙げて、遺漏のないよう準備を進めているところです。皆様も、ともにその円成を祈念してください。
(仏教文化研究所主任 下室 覚道 記)