科学研究費(科研費)は、人文・社会科学から自然科学までの全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」を格段に発展させることを目的とする「競争的研究資金」であり、専門分野の近い複数の研究者による審査を経て、独創的・先駆的な研究に対する助成が行われます。平成26年度、本学文学部文化財学科の小池富雄教授の研究「X線CT撮影はじめ科学的分析を応用した東アジア古漆器の製作技法と保存修復の研究」が採択されました(平成30年度までの予定)。
日本をはじめ東アジアの漆工芸史を研究テーマにする小池教授。研究室では実際の文化財、美術工芸品の分析、漆工品の保存修復を行い、博物館で即戦力として通用する能力の習得を目指しています。
今回、採択された研究は「鶴見大学附属病院のCTスキャンを積極的に利用して漆工芸品を精密に分析する」ことがポイント。「文化財学科でもX線撮影ほかの機器は揃っていますが、歯学部長の小林馨教授から、病院の臨床用CT使用のお話をいただき、分析機器がほとんど学内で揃うようになりました」。医療用機器が文化財の分析に使われる例はまだ珍しく、「科研費に採択されたポイント」と小池教授は考えます。「もともと人体用なのでスキャンの時間が短く、画像の精密度やデータの重さなど、さらに調整を重ねていきます」。
「文学部と歯学部がある大学。多彩な分野のスペシャリストが集まる先生方。こうした特色を生かせば文化財学科の可能性はもっと広がっていくでしょう」。
平成26年度の受託研究はスペインの教会向け輸出品だった安土桃山時代の
南蛮蒔絵洋箪笥の保存修復。研究室の院生、学生と小池教授