PREEMETIVE MEDICINE / 先制医療について

先制医療とは

人類の健康の維持、向上と疾病の治療は、世界的に重要なテーマと認識されています。日本においては特に、超高齢化社会の到来や、価値観の多様性など、患者一人ひとりへの個別化を意識した、いわゆるオーダーメイド医療が求められるようになってきています。また治療分野のみならず、健康の維持、ヘルスケアという価値観もますます重要視されており、各分野の基礎研究も近年活発に行われ、急速にその成果が上がってきています。
一方で、それら基礎研究の成果を臨床治療の場へ応用していく仕組み、いわゆるトランスレーショナル・リサーチを実行する仕組みの構築は、まだ初期の段階と言えます。また医療技術の目覚しい進歩の結果、より多くの人々が健康で長生きすることが可能になりましたが、同時に膨らみ続ける医療費の問題も財政を圧迫し、見逃せない課題となっています。

そこで私たちが着目したのが「先制医療」(Preemptive medicine)という概念です。これは病気が発症することをあらかじめ高い精度で予測(Predictive diagnosis)し、あるいは正確な発症前診断(Precise medicine)を行うことで、病態・病因の発生や進行のメカニズムに合わせて治療を講じ、発症を防止するか遅らせるという、新しい医療のパラダイムです。

昨今の先端医療研究の進展の結果、さまざまな疾患で発症機構の解明が進みつつあり、医学が経験の学問から精密科学へと発展しつつあります。一般に慢性疾患、特に加齢に伴って増加する疾患は、遺伝的素因(ゲノム)を背景とし、さまざまな環境要因が複雑にかかわりあって発症すると予想されています。そしてこの先端医療を次の段階へ推進する鍵は、それらの基礎研究の成果を臨床応用していくための基盤整備(Infrastructure)です。それは一研究者や一研究室の力だけでできるものではなく、基盤となる施設と、産学官連携によるコミットメントの力で実現できるものです。また同時に、トランスレーショナル・リサーチのためのトレーニングの環境を整備することも大切です。臨床だけでも要求される知識が急速に増える中、基礎研究からの膨大な情報量を効率的に学び、トランスレーションに必要なトレーニングを受けられるシステムを確立することも、重要な要素だと考えられます。