Graffiti of Dental Technology

Vol.80 : 文房具を使う!「定規」の前歯部補綴装置製作への有効活用法

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はじめに
  前歯部の補綴装置を製作する際に,自分の意図と異なり正中が傾斜してしまうことがある.これは,作業模型の基底面の傾きやノコによる分割線の傾きといった「視覚的な情報」に惑わされることが一つの要因である.他にも,左右対称の形態を付与するには知識や技術力が必要であり,経験が浅ければ対称性を的確に判断することは困難である. 
 そこで,作業模型からの視覚的な情報に惑わされることを防ぎ,かつ左右の対称性を分析するのに有効な文房具「定規」の活用法を紹介する.



「定規」はこんな症例に有効


経験年数の浅い研修生が製作した前歯部補綴装置.ノコによる分割線に惑わされ,正中が大きく傾斜したものと考えられる.実際,このような事例は多い.(症例1へ)

上顎中切歯の症例では,左右対称の形態を付与することは難しい.非対称な部位を的確に判断する必要がある.(症例2へ)

 

どのような「定規」が良いか?


筆者が10年以上に渡り愛用している木製の定規.ポイントは材質が不透明であること,定規に垂線を記入できることである.

あらかじめ垂線が印記された方眼定規も有効で,透明な場合は紙などを貼るとよい.

 

症例1 錯覚防止と形態の分析に活用


本症例は右側3〜左側2のジルコニアBrである.レジン前装試適を行った後,完成させる計画となっている.

口腔内試適時に,正中や歯冠軸の傾斜が見られ修正が必要となった.*顔貌写真は個人情報保護の観点から差し控える.

口腔内写真を参考にリマウントを行った.作業模型の傾きや分割線に惑わされることなく,咬合器に対してまっすぐな補綴装置の製作が必要である. 傾斜した作業模型に惑わされないように「定規」を用いて「錯覚が生じる因子」を隠す.
定規を切縁方向から歯頚部方向へ,少しずつ平行移動させる.正中や歯冠軸の傾斜,切縁の長さの違いが明確にわかる. 形態修正時にも定規を平行移動させながら確認を行い製作したジルコニアBr.正中や歯冠軸の傾斜が改善された.

 

症例2 中切歯の対称性の分析に活用


同様に中切歯の形態修正に「定規」を平行移動させながら対称性の確認を行う.

特にラインアングルの傾き(c)や幅径(a),ラインアングルから外形までの前方から見える隣接面の幅(b)を局所ごとに観察できるため,左右の違いが明確になる.

左右の違いを確認しながら形態修正を行い,(a,b,c)の対称性を評価する. 完成したオールセラミッククラウン.的確な分析により短時間で左右の対称性がとれた.

 


おわりに
 前歯部の補綴装置を製作する際に「定規」を使用することで作業模型からの「錯覚因子」を隠すことができる.さらに「定規」を平行移動させ,局所ごとの観察をすることで,左右の非対称な部位を見つけやすくなる.また,実際の臨床では顔貌の水平情報をホリゾンタルバーや撮影された画像などで伝達されることも多い.ラボサイドではそれらを活かし,咬合器にまっすぐな補綴装置の製作が求められる.今回の内容と共に作業模型からの「錯覚因子」を減らすための模型製作Vol.67も参考にしていただければ幸いである.

参考文献
1) 松本敏光:平行模型製作に便利な水平線描記装置の活用法,写真で学ぶ即!実践 臨床技工テクニカルヒント,14-16,医歯薬出版,東京,2014.
2) 松本敏光:平行模型製作に便利な水平線描記装置の活用法.Graffiti of Dental Technology,vol.67.

Presented byK.Ihara(歯科技工研修科 伊原 啓祐)


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