Graffiti of Dental Technology

Vol.77 : ピエゾグラフィを用いた全部床義歯の技工

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はじめに

 全部床義歯の維持安定には、口腔周囲筋の動態が深く関与しているため筋活動を阻害せず、周囲筋の動態と調和した人工歯排列と義歯床筋圧面の形成を重視しなければならない。そこで本学では、生理的なデンチャースペースを記録する方法として、発音を利用した機能印象を行う『ピエゾグラフィ』により義歯を製作している。
 今回は、そのピエゾグラフィックトレーの製作と得られたピエゾグラフィックスペースに従った人工歯排列のポイントを紹介する。



ピエゾグラフィックスペースの採得を行ったトレー


 

ピエゾグラフィックトレーの製作

図1咬合採得を終えた咬合床と咬合器装着

咬合器装着後、ピエゾグラフィックトレーの製作に移る。

図2 ピエゾグラフィックトレーの製作

筋圧形成された辺縁を再現した基礎床を2個製作する。1つはトレーとして、1つは排列に用いる。

図3 クリアランスの計測 

咬合器上で基礎床が上顎咬合床と接触しないように調整する。クリアランスを計測し維持機構の大きさを決定する。

図4 維持機構のレジン球

  シリコーン印象材を保持するための維持機構として、常温重合レジンで球体を製作する。上顎とのスペースの関係により、大きさを変える必要がある。 

図5 維持機構を基礎床に固定する

維持機構は、印象材の戻りが確実になるように左右6カ所に付与する。取り付け位置は、舌圧と頬圧が均衡する歯槽頂線より1mm程頬側としラウンドバーで軽く溝を付与した上に、常温重合レジンで固定する。咬合器上で上顎ろう堤と接触していない事を確認する。維持機構は球体であるため記録したシリコーン印象材の繰り返しの着脱が可能となる。

 

図6 ピエゾグラフィの採得

  完成したピエゾグラフィックトレーに、フローの異なる3種類のシリコーン印象材を順次使用し、患者に発音させながらピエゾグラフィックスペースを採得する。
 

 

ピエゾグラフィックスペースに順じた人工歯排列と義歯床研磨面形態


図7 トレーの調整と固定

ピエゾグラフィックスペースが採得されたトレーを作業模型に戻す。(模型に接触している辺縁部の印象材は、予め切除する。)外表面コアの採得に備え模型辺縁に溝を付与する。

図8 外表面コアの採得

分離材としてワセリンを塗布し、シリコーンパテで外表面コアを採得する。この際 厚みは5mm以上確保する。

図9 ロウ堤製作の準備

ピエゾグラフィを取り外した後、予め製作しておいた基礎床を装着し、外表面コアを組立てる。再現されたスペースに溶かしたパラフィンワックスを流し込む。 

図10 咬合床の製作

ピエゾグラフィックスペースが再現された咬合床。ロウ堤の幅径を基準にして臼歯部の人工歯を選択する。

図11 前歯部人工歯排列 

  上顎前歯を排列する。下顎前歯は、ピエゾグラフィックスペース中で排列位置、歯冠軸の傾斜を決定する。

図12 臼歯部人工歯排列 

下顎臼歯の排列は、ロウ堤の頬舌的中央に臼歯部人工歯の中心溝が来るように排列するが、歯列の流れは、ピエゾグラフィックスペースにより決定される。

図13 ロウ義歯完成 

上顎臼歯部の人工歯排列は、下顎の排列位置に合わせて通法通り行う。歯肉形成は、採得したピエゾグラフィの外表面形態を再現するように、研磨面を仕上げる。

図14  ロウ義歯の口腔内試適と完成

ロウ義歯を口腔内に試適し、義歯の維持安定を確認後、通法に従い義歯を完成する。

 

 


おわりに
 ピエゾグラフィを用いた技工は、患者固有のデンチャースペースに合致した人工歯排列と筋圧面形態を付与することが大切である。この術式は、高度に吸収した下顎顎堤などの難症例に有効であると言われており、そのような症例に取り組む際に参考にして頂けたら幸いである。

参考文献 新保秀仁:ピエゾグラフィと機能的運道路法により義歯を製作した1症例,日補綴会誌 Soc 6:317−320,2014.


Presented byH.Naohiko(歯科技工研修科 原田直彦)


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