Graffiti of Dental Technology

Vol.69 : 分割型個人トレーの製作について

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はじめに
 腫瘍、外傷、先天奇形などの原因により開口量が充分ではなく、個人トレーを用いた印象採得が困難な場合がある。そのような場合に個人トレーをツーピースに分割して製作し、口腔内で一体化して印象を採得する術式がある。今回は開口が困難な症例と大きなアンダーカットを有する顎欠損の症例に用いた分割型個人トレー(以下、分割トレーと略す)を紹介する。



症例1 開口が困難な下顎補綴症例に用いた「分割トレー」
 図1 口腔癌の手術により開口が困難なため、全顎用既製トレーを口腔内に挿入できず局部用回転トレーを用いて診断用模型の印象を行なった。  図2 残存歯列側のトレー(一次トレー)を製作した後、欠損部側のトレー(二次トレー)を重ね合わせて製作した分割トレー。
 図3 正確な位置関係を再現するため二次トレーは一次トレーの柄を覆うように製作した。複雑な回転防止やロック機構を与えても口腔内では扱いにくい。  図4 分割トレーを一体化した状態。二次トレーは一次トレーの柄の付け根から上面およびテーパードにした側面に誘導されスムースに適合する。 
 図5 口腔内で一次トレーと二次トレーの試適後、残存歯側の印象採得を行なう。  図6 一次トレーの印象材が硬化した後、二次トレーに印象材を盛り付けて適合させる。柄の誘導面が広いため位置関係の決定が容易である。
 図7 口腔内でトレーを分割せずに一塊として取り出すことができた。トレー撤去時は口角が外側に向かって広がり易いため回転させて撤去できる場合が多い。  図8 開口障害を伴う症例でも残存歯側と欠損部側などに分けて計画的に印象採得することで良好な作業模型を製作することができる。

 

症例2 大きなアンダーカットの顎欠損を有する症例に用いた「分割トレー」

 図9 歯槽骨および顎骨を欠損した症例。口蓋側から見える欠損範囲より内部の実質欠損は深く広い。

 図10 副模型を製作し欠損部の断面からアンダーカットの状況と個人トレーの着脱方向を検討した。担当医は欠損部のアンダーカットを維持安定のため利用する方針である。 

 図11 作業模型における欠損部の形態再現性を重視し、全部床用個人トレー(一次トレー)と欠損部用トレー(二次トレー)を組み合せて印象を採得する方針とした。 

図12 欠損部の頬側アンダーカット域に印象圧が加わり易いように口蓋側から二次トレーを挿入する計画とした。一次トレーの欠損開口部に二次トレーの挿入を誘導するための斜面を設けた。

 図13 二次トレーに取っ手を付与して基本形ができた状態で、担当医と取っ手の大きさや高さ、ニ次トレーの挿入角度を検討、確認する。  図14 二次トレーは一次トレーのガイド面に誘導され担当医の意図する定位置に収まった。術野の狭い口腔内でも安心して二次トレーを挿入することができる。
 図15 二次トレー(欠損部)の着脱方向に合わせ、口腔内から一塊として取り出した印象。アンダーカットの大きな部分には軟質系の印象材を用いて撤去を容易にした。  図16 完成した作業模型。トレーを分割することで大きなアンダーカットのある欠損部でも再現性に優れた作業模型を製作することができる。

 


おわりに
 分割トレーは開口が困難な症例や大きなアンダーカットを有する顎欠損の症例などに遭遇した場合に有効な印象採得法である。一般的な個人トレーと異なり、担当医がどのような印象採得法を計画しているのかを製作前に充分に打ち合わせする必要がある。また、分割トレー完成後には担当医と一緒に口腔内への挿入角度やトレーを一体化する際のシミュレーションを行なう確認作業も大切である。

参考文献
・顎顔面補綴の臨床 〜咀嚼・嚥下・発音の機能回復のために〜編集 大山喬史 谷口 尚  医学情報  2006年
・大久保力廣,前田祥博,杉山浩一,鈴木恭典,石川佳和,細井紀雄:小口症および開口障害を有する患者の印象採得,  鶴見歯学,28(1):145-151,2002.


Presented by T.Murata (歯科技工研修科 邑田 歳幸)


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