Graffiti of Dental Technology

Vol.51 : 睡眠時無呼吸症候群治療用スリープスプリントの製作

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はじめに
 本学歯学部附属病院では、2004年から「いびき外来」でいびき症と睡眠時無呼吸症の治療が行なわれています。その治療の一つに患者が睡眠時に装着するスリープスプリントがあり、固定性の装置と可動性の鶴見型の装置があります。可動性の鶴見型には舌側部連結型と唇側部連結型があり、今回は可動性の舌側部連結型についてその製作術式を紹介します。


診断

 今回紹介するスリープスプリント。下顎を前方で固定し舌などの軟組織を前方に誘導、気道を確保することで、いびきを防止することを目的に製作します。  最大下顎前方位の75%(本症例では8mm)下顎を前方に位置させ,パラフィンワックスで咬合位を決定後、シリコンバイト材によりバイトを採得します。
 咬合器装着後、シリコーンバイトを外し、上下顎歯列の空いたスペースにセファロ分析用のワックスバイトを製作します。  ワックスバイトを装着したセファロ分析により、気道が拡大していることを確認します。

設計と製作

 スプリントの設計は、頬側はキャップクラスプの設計を基本とし、アンダーカット量は0.25mmを目安とします。また、歯冠の鼓形空隙部はサベイラインをわずかに越える設計とします。  下顎臼歯部のように頬側面でのアンダーカットの確保が困難な場合、舌側に0.25mmのアンダーカットを設定することにより、維持力を確保します。

なし
  スプリントの成型には、ミニスターS(ショイデンタル社、モリタ)の加圧式成型器を使用し、樹脂プレート(デュラン2.0mm)を圧接します。

樹脂プレートを圧接後、上下顎にスペースがある場合は、常温重合レジンを築盛して咬合接触を回復した後,側方運動での咬合を調整します。

なし

スプリントの試適時に下顎スプリントの舌面に舌支持部の形態を付与するために、リライン材として用いるデンチャーライナー(松風)を置き、舌機能時の運動を採得します。

上下顎を咬合させた状態で連結装置の位置関係を確認します。上顎の設計線が目視でき、上顎の正中と連結部の設計がほぼ一致している事を確認します。

口腔内で舌の運動を採得した舌支持部を下顎連結装置の設置線に沿って樹脂プレートが露出するまで10mm幅で削除します。

連結装置の各パーツを図に示します。a上顎前歯舌側部に位置させ長さは左右の犬歯までとします。bの輪にaを通して上顎に固定、次に下顎の舌支持部にcを固定します。
bのフック部はcのワイヤーにパッチィとはまり、維持力が出るように屈曲し調整します。 連結装置を固定するために樹脂プレート表面は新鮮面を出し、レジン接着材を塗布する。金属接着性プライマーをワイヤーに塗布した後、aのワイヤーを常温重合レジンで固定します。
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 咬合器の後方から下顎の連結装置を手前に引き、下方へ下げながら固定します。cのワイヤーは削った舌支持部の中に収まるようにし、常温重合レジンで固定します。  左図のように連結装置が垂直に固定されると下顎が後方に移動するため,右図のように下顎固定部は後方に位置させ下顎の後退に抵抗するように,固定することが大切です。

 通法に従い研磨、完成した鶴見型スリープスプリント。上下顎を分離させる場合は上下のスプリントを把持しビンの蓋を開けるように水平にねじることで外れる仕組みになっています。

 口腔内に装着したスリープスプリント。下顎を前方に保持することで軌道を確保し、いびきを防止することができます。また左右に可動性を与えることで睡眠時のブラキシズムなどの悪習癖に対応することもできます。

 


おわりに
 今回は本学歯学部附属病院の『いびき外来』で用いられている鶴見型スリープスプリント(舌側連結型)の製作法をご紹介しました。この装置は、舌側に連結装置があることで、口唇が閉じやすく、口唇から空気が漏れる恐れが少ないため、経鼻的持続陽圧呼吸療法用治療器(nCPAP)との併用も可能です。臨床でお役だていただければ幸いです。  

経鼻的持続陽圧呼吸療法用治療器:nasal CPAP(nasal continuous positive airway pressure ; 鼻シーパップ、ネーザルシーパップ)装置よりチューブを経由して鼻につけたマスクに加圧された空気(陽圧の空気)を送り、その空気が舌根の周囲の軟部組織を拡張することで吸気時の気道狭窄を防ぐ方法。(Wikipediaより抜粋)



Presented byN.Kawamura(歯科技工研修科 河村 昇)


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