Graffiti of Dental Technology

Vol.45: 歯型彫刻 上達への近道. 〜上顎第一大臼歯を観察する〜

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はじめに
 『天然歯形態を再現する』 ことは決して容易なことではありません.天然歯形態を再現するには 『観察する力』 とそれを 『具現化する力』 の双方が必要であると思います.
今回は,一歩目としての『観察』について,天然歯と歯科技工研修科の研修生作品とを対照しながら形態的特徴の解説をしたいと思います.




現在,歯型彫刻の指導にあたり,その指摘頻度から上記の4つの観察が上達への近道ではないかと考えました.

研修生作品

 

咬頭頂の位置を観察する

図1 『上顎第一大臼歯の全形はほぼ立方体に近いが咬合面はひし形に近い形を示している.』 (藤田 恒太郎.歯の解剖学より引用)

近遠心の頬側咬頭頂と舌側咬頭頂のそれぞれを結んだ直線は平行に近い関係であるので,咬頭頂間の距離もそれぞれ等しいと思います.

 

小窩,裂溝の位置を観察する

図2 『咬合面の主要な溝は,多少模型的に考えると,その上方が斜遠心に向く H 形を示している.』 (藤田 恒太郎.歯の解剖学より引用)

頬側溝と遠心舌側溝の関係も平行に近い関係にあります.また,頬側咬頭頂を結ぶ直線と頬側溝が交わる角度に注目してみると,その角度は90度を超えることはありません.

図3 近心小窩,中心小窩と遠心舌側小窩を結ぶと 『への字』 を成します.また距離はおよそ 1:2 と思われます. (窩の名称は新歯科技工士教本 歯の解剖学より)

他の天然歯模型を観察しても,図1,2,3に挙げた特徴が見られます.

クリックすると図1,2,3の特徴を明記したスライドを見ることができます.

牛乳パックを用いて表現してみました.咬合面の形が異なってもその規則性を守ることで天然歯形態のバランスを保てることがわかります.小窩,裂溝の位置は各咬頭の面積を決定づける重要な境界線となります.

 

咬合縁から咬合面中央への形態を観察する

天然歯は咬合縁よりも窩,裂溝は深く,そして中央に向かって傾斜しています.紙を丸めて円錐状にしたものをイメージしてみてください.

研修生の作品は咬頭傾斜角が小さく平面的であることがわかります.

 

最大豊隆部を観察する

『‐頬側面観‐ 接触点は近心が歯冠長の約1/3咬頭頂寄り,遠心約1/2のところある.』 ( 尾花 甚一,細井 紀雄.第2版 最新歯型彫刻 理論と実際より引用)

最も狭窄している部位は歯頸線ではなく,根尖寄り(青矢印)にあるということにも注目してください.

模型の角度を変えて観察すると頬面溝の終末より始まる横走溝は,隣接面まで走行し,歯によっては歯冠を一周するものも見られます.また,近遠心の辺縁隆線は遠心の方が深い弧を描くことや遠心の歯頸線付近には凹部が見られることにも注目してください.

 

 舌側面観を観察する

 

『咬合縁の遠心1/3より舌面溝が始まり,それによって区別された近.遠心部は全体として膨らんでいる.』 (日本人永久歯解剖学より引用)

舌側の近,遠心部は卵のように膨らんでいることがわかります.角度を変えてもその膨らみが観察できます.

牛乳パックの基底面の対角を指で挟んでみると,舌側面から見える近心面の感じや近心舌側咬頭頂に向かう隆線など歯のねじれをイメージできます.

 


おわりに
 歯型彫刻の指導に天然歯模型を観察して見つけた規則性を,解剖学的根拠とともに説明することが上達への近道となる一方法と認識しています.『何かうまくいかない』,『これから歯の形態を勉強したい』方々のお役に立てれば幸いです.

参考文献
1.藤田 恒太郎.歯の解剖学.東京:金原出版,1949.
2.橋 常男,小林 繁,副島 泰子.新歯科技工士教本 歯の解剖学.東京:医歯薬出版,2007.
3.尾花 甚一,細井 紀雄.第2版 最新歯型彫刻 理論と実際 東京:医歯薬出版,1993.                                        
4.上條 雍彦.日本人永久歯解剖学.東京:アナトーム社,1962.


Presented byK.Ihara(歯科技工研修科 伊原 啓祐)


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