Graffiti of Dental Technology

Vol.39 :インプラント補綴装置の前装部の破損に対する対策

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はじめに
 
インプラント補綴で遭遇するトラブルの一つに前装部の破損がある。その主な原因は、チェアサイドでは咬合干渉や異常咬合習癖など、ラボサイドではフレームワークの設計や不十分な維持装置などがある。レジン前装冠では接着処理とともに機械的維持の存在も非常に重要である。今回はラボサイドにおける、前装部破損の対策例を発生部位ごとに紹介する。



最後方臼歯遠心辺縁隆線の破損

 最後方臼歯遠心辺縁隆線は、教科書的にも前装部破損の多発部位としている。

 最後方臼歯遠心辺縁隆線の前装部が破損している。  上顎の遠心咬頭との咬合接触に対する対策に問題があると思われる。
対策
 レジン前装冠ではサポーティングエリアを設け、確実な機械的維持を付与することが重要である。また、咬合接触を与えないか、あるいは金属による咬合接触といった選択肢もある。

 

審美性を妨げない範囲で、確実にサポーティングエリアを設ける。

 

遠心辺縁隆線のみを金属で回復する。金属色の露出もわずかで外観に触れにくいため患者の理解も得られやすく効果も大きい。

近心辺縁隆線の破損(隣接面付近)

  近心隣接面では審美性を考慮した窓あけとともに、前装部破損に対する配慮も忘れてはならない。

図
 近心隣接面の前装部が破損している。咬合に対するフレームワークのデザインや内部のサポート構造に問題があるように思える。

 インプラント支台は天然歯支台にくらべ歯頸部が歯根側に向かって狭窄しているため、サポーティングエリアが確保しづらく前装部が破損しやすい。

対策
 審美性を損なわない範囲でメタルによるサポーティングエリアを設定するか、あるいは内部にサポート構造を設ける方法が有効と思われる。

 咬合接触面積が大きい対合歯の場合、縁端部での破折の危険が増加する。近心辺縁隆線直下に咬合力を受け止めるためのサポーティングエリアを付与する。

 近心隣接面にサポーティングエリアを確保してある。頬側や前方から金属が見えることはない。

 スプルー植立部の破損 

 前装部破損の原因に不十分な機械的維持があげられる。前装面にリテンションビーズを付与するが、スプルー植立部に十分な機械的維持形態を付与することは難しい。

 破損部分には機械的維持が皆無であった。

 カッティングジスクによる機械的維持が付与されているが不十分である。

対策(機械的維持の付与)

 スプルー植立部位にカッティングジスクを用いて機械的維持を形成する。また、スプルーの植立部位は機械的維持形態の形成が比較的容易な咬頭頂などが好ましい。

 カッティングジスク(Ticonium THINDISCS 東京歯科産業(株))をダイヤモンドドレッサーを用いてさらに薄く修正する。

 スプルー植立部をカーボランダムポイントで整えた後、薄く修正したカッティングジスクを用いて、格子状の機械的維持を形成する。

 フィッシャーバー(マイジンガーST38HP006 ヘレウスクルツァージャパン(株))をより細く、三角錐状に修正し、展延した金属を除去する。

 スプルー植立部にも機械的維持が付与された。



おわりに
 
 最近のインプラントは成功率が高く、脱落などの大きなトラブルはないが、図のように前装部が破損したまま放置されている症例がある。今回紹介した対策の重要性を改めて感じさせるものである。

  

参考文献
 1)武田孝之,椎貝達夫:長期症例から考える上部構造への配慮,補綴臨床,39(5):528-535,2006.
 2)上林健,小濱忠一,小田中康裕,行田克則:下顎臼歯部欠損から始めるインプラント上部構造製作のポイント,QDT,31(2):31-55,2006.
 3)十河厚志:若手技工士必見! 臨床技工"困った問題"解決講座 インプラント編 インプラント上部構造の外装マテリアルの破折,QDT,32(7):89-93,2007



Presented by 歯科技工研修科 松本敏光


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