技工リポート


Vol.11:AGCガルバノテクニック〜

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 平成14年度に本学歯学部付属病院、口腔顎顔面インプラント科にAGCシステム(WIELAND社)が導入され、 中央技工室と外注ラボで技工を担当しています。現在までに、陶材焼付冠110本、インプラント上部構造に応用したものが15本装着され、そのうち1本が仮着中に破折しましたが、他は良好な経過を経ています(平成15年9月30日現在)。
  純金という素材と明るい色調から患者の満足度は高く、適合の良さから「迷いがなく装着できる」と担当医の評価も得ています。技工士の視点から見ても時間短縮や経験の差によらずに一定の適合が得られることなどの利点を挙げることができます。
  今回はスタンダードな症例を通してそのシステムと製作工程を紹介します。

AGCガルバノテクニック

 Luigi Galvani(1737-98)が化学エネルギーを電気エネルギーに変換するという研究を行いました。そのプロセスを逆転させた電気分解によって起こる電着(ガルバニゼーション)を応用した技術です。メッキと同様のプロセスですが電鋳は厚さ0.2〜0.3mmに電着したものです。
 電解液に毒性のない亜硫酸ゴールド電解液。陽極(カソード)にプラチナコーティングしたチタン製ネットまたはチューブ、陰極(アノード)にシルバーラッカーを塗布した複歯型。この複歯型にエレクトロフォーミング(電鋳)されます。

AGCシステム
 AGC Micro 1度に6個の電鋳が可能。
 AGC Speed 1度に1個の電鋳を最短60分で製作可能。
  WIELAND社製
  (輸入元 大信貿易/発売元 大信エンジニアリング)

テクニカルデータ
 
組成  >99.9%ゴールド
 融点  1064℃
 ビッカース硬度   >120HV(焼成後 30HV)
 コーピングの厚さ  0.2mm〜0.3mm

 

AGCガルバノテクニックの一症例

 術前。患者はすでに装着されている右側犬歯の陶材焼付冠の色調改善と歯頚部歯肉のダークゾーンの改善を希望。

 歯頚部歯肉のダークゾーンの改善のためAGCクラウンによる再補綴を計画。

 通法どおり作業模型を製作した後、AGCデュプリケーションシステムにて複歯型を製作する。

 システム化されており作業は容易です、専用シリコン印象材と模型材の精度も高い。

 複歯型の形態を整えた後、AGCカッパーロッドを取り付け、AGC導電性シルバーラッカーを塗布する。

 歯型は乱流の生じにくい流線形にしている。シルバーラッカーの被膜の厚さが適合に影響するため塗り過ぎには注意。

AGC Micro にセットし、エレクトロフォーミングを行う。
(クリックするとムービーを再生します。)

 エレクトロフォーミングが完了した状態

 電鋳不良の場合、目的とする厚さが得られないことや、陶材の焼成時に変形を生じることがある。

 エレクトロフォーミング後、石膏模型を溶解し、マージン部の余分なゴールドを削除。内面のシルバーラッカーは硝酸で除去する。

 マージンのトリミングは、カーボランダム等ではゴールドがのびてしまい切削効率が悪いため、良く切れるカーバイトバーやシリコンホイールでトリミングする。

 陶材との結合を高めるためAGCゴールドボンダー(焼成温度920℃)を塗布し焼成する。
使用可能なセラミックの焼成温度は950℃以下。

 当技工室では焼成温度880〜920℃のゼオセライト(山本歯科貴金属地金社製)を使用している。AGCとの相性は良いようです。

 口腔内に装着されたAGCによる陶材焼付冠。色調の改善と歯頚部歯肉のダークゾーンが改善された。

 暗い酸化膜を生成しないので陶材焼付冠にみられる歯肉への影が生じない。

まとめ
 技工における金属の加工には主に鋳造という手法を用いてきましたが、新たに電鋳という手法が選択肢に加えられました。これにより経験の差によらず高い適合精度を得ることができます。作業時間の短縮、コスト削減などの利点も挙げられます。しかし、作業工程は化学実験のようで、材料の保管状態やその取扱いはシビアです。特に器具の汚れやほこりは電鋳状態に影響するため注意を払っています。
 99.9%ゴールドの特性により高い生態親和性と明るい色調が得られますが、コーピングの強度や陶材との接着などが懸念されます。今後、予後を見守り、適応範囲を見極めていくことが必要と感じています。

参考文献
 1.斉藤 勇:"Total Grade Up" AGC Galvano System の可能性. QDT Vol.27/2002 Aprill 457〜467.
 2.Wirz,J.,Hoffman, A.:Electroforming in Restorative Dentistry.Quintessence Publishing,Chicago,2000.

 

 

Presented by T.Matsumoto(歯科技工研修科 松本 敏光)


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