教育・診断・研究の方針

教育

先端科学の進歩に伴い、病理学で取り扱う様々な疾患概念が急速に大きく変わりつつあり、従来の教科書では対応出来ないことが以前より指摘されている。加えて自然科学におけるテクノロジーは格段の進歩を遂げているにもかかわらず、その成果は細分化された個々の領域での知見にとどまっていることから、現在の病理学は様々な領域を統合した学問として新たに再構築されるべきであると考えている。
当講座では生命の仕組みをミクロからマクロまで総合的に理解させ、Evidence Based Medicine(EBM)を徹底させることにより修学意欲の向上を計る事を目標に、最先端の生命科学の動向を的確に捉えながら、分子生物学、遺伝学、発生学、免疫学を通して病理学教育に還元することを基盤としている。更に歯科医師の説明責任が問われていることから、病態や治療行為の適切な説明は欠かせない時代になっており、当講座では講義や実習を通して学生のコミュニケーション能力や問題発見・解決の能力を育成を図っている。

診断

従来の診断学にドラスチックな改革が求められており"主観的な形態学的診断の限界"を克服し、客観的根拠に基づいた病理診断を行うことが質の高い医療の供給には必要である。すなわち、これからの病理診断学では「ゲノムプロジェクト」を主流とする生命科学の知見を基盤にした診断法の根本的な変革が求められている。
このことから、当講座では臨床材料より得られた一次元的遺伝情報を精度の高い診断情報へと変換するバイオインフォマティクス(生物情報学)を導入し体系的な診断法の確立を目指している。

研究

難病とされる自己免疫疾患、神経疾患は癌・生活習慣病と同じく不幸な転機をとることが知られているが、その大半は原因不明であり疾患非特異的な診断法や対症療法が行われているのが世界の現状である。このことから、疾患に特異的な診断法・治療法の確立によって原因不明の難病克服への活路を見い出すことは極めて重大な研究課題である。我々は旧来の病理形態学による現象論的な解析から脱却することにより難病の病因論の本質に迫る試みを行っている。
その主体は口腔領域に病態を示す自己免疫疾患や癌などの難病の病因解明およびその治療戦略の開発であり、様々な手法により特定した病因はreverse genetics により検証し、ヒトに類似した病態が認められれば疾患モデルマウスとして用い治療法の検討を行っている。このような解析方法により現在手掛けているプロジェクトは学術振興会科学研究費補助金や、厚生労働省の特定疾患対策研究事業の支援を受け検討を行っており、腺組織再生にかかわる幹細胞の特定や分化増殖に必須な転写調節因子群の相互作用の解明を行っている。当講座では医・歯・薬大学出身者のみならず多数の生命科学専攻の工学部・理学部卒業生や学生で構成されており、極めて学際的な環境で研究が行われている。
また産学連携が盛んであり、企業の研究所からの研究員も研究に参画し、多くの協同研究が進行している。このような研究環境から大半の学位取得者・卒業生をこれら企業の研究所へ輩出することにより、更に共同研究が進展した実績があり、この学際的な研究・教育の場をより確固たるものにしたいと考えている。