授業紹介〈5〉 選択科目・文化財系列

選択科目(文化財系列)   
文化財科学Ⅰ
(文化財分野における自然科学の利用とその理念)
 文化財の修復や保存を考える上で「材質」の基礎知識は必須である。また、材質を分析する上で必要な科学調査法も、その原理を理解した上で使用することが求められる。博物館資料保存論【Ⅰ】/文化財科学【Ⅰ】では、文化財で用いられる幾つかの材質の基礎知識と科学的な性質を理解し、「文化財」を「材質」として考える見方の初歩を学ぶ。また基本的な科学調査法の基礎原理も学ぶ。

 文化財科学Ⅱ
(文化財分野における自然科学の利用とその理念)
 博物館資料保存論【Ⅰ】/文化財科学【Ⅰ】で学んだ文化財の材質の基礎知識をもとに、博物館資料保存論【Ⅱ】/文化財科学【Ⅱ】では資料の活用と保存の両立を理想とするための「文化財の保存環境」の基礎知識を中心に学ぶ。文化財を取り巻く「環境」とは何か、どのような「因子」からなるのかを知り、「材質」に対して「環境」がどのように影響を及ぼすのかを科学的に考えることを学ぶ。
 また、「保存」と相反するようにも考えられる「資料の活用」とは何か、その基本を学ぶ。
 「災害」においては、今後増加が予想される被災文化財への取り組みも紹介する。

有職故実Ⅰ
(朝廷の官制、年中行事、装束について学ぶ)
 律令国家の成立とともに整備された官位・官職制度をはじめとした様々な国家制度や機構は、摂関期には大きく変容を遂げ、摂関家を頂点とする公家の家格や家職、官位・官職の体系が整えられるとともに、公事と呼ばれる朝廷政務が年中行事として整備されていきました。有職故実とはこうした公事を行うための「マニュアル」であり、政治的な実践の知識であった。
 この講義では9世紀~12世紀を中心に官位・官職制度の変容と展開を解説するとともに、朝廷や摂関家での年中行事、天皇や公家の装束などについても講義する。
有職故実Ⅱ
(武家政権(鎌倉幕府・室町幕府)の職制、武家儀礼について理解を深める)
 この講義では武家政権(鎌倉幕府・室町幕府)の職制や地方統治機関のあり方やその展開、幕府のもとで成立した武家独自の儀礼(武家儀礼)について取り上げ講義する。
 古代律令国家に比べると、武家政権の職制は簡素な実務型の体制をとるが、その職制は当時の政治情勢や政治体制の変化に応じて、大きく変わっていった。また、武家儀礼によって構築された関係(礼的秩序)が幕府の支配体制を支えていた。この講義ではこうした観点から、武家政権の職制と儀礼について考える。

文化財各論Ⅰ
(遺跡・史跡の保存と活用)
 日本国内の様々な時代の遺跡・史跡を取り上げ、概要、過去の調査や保存活動(運動)、現在に至るまでの出来事を踏まえ、現状や後世にむけた保存と活用方法について文化財科学の視点も交えて事例を検討する。
 授業スケジュールのテーマについて、具体的な遺跡や史跡を挙げて授業を進める。なお、いくつかの遺跡・史跡を比較することでそれぞれの抱える問題やいかにして現在に至ったのか検討するため、1回の授業中に複数ヶ所を取り上げたり、数回にわたって1ヶ所を取り上げることもある。
 新聞やテレビで遺跡の発見や史跡指定に関する話題、文化財の保存に関連する報道がされることがあるため、このような話題にも日頃から目を向けておく。

文化財各論Ⅱ
(日本刀と甲冑で学ぶ日本美術工芸)
 日本刀と甲冑には、金工、漆工、染織、皮革加工など、様々な工芸技術と素材が集められている。これらの学習を通して、日本美術工芸、さらには日本文化の特質を理解するための基礎的教養を身につける。

文化財各論Ⅲ
(仏教彫刻の制作技法と仏師 )
 仏像は金属・塑・乾漆・木など様々な素材によって制作されている。この講義では仏像の制作技法を学ぶことで作品の構造を理解する。またその制作者である仏師を取り上げ、彼らの技法や各時代に主流となった作風を理解する。

文化財各論Ⅳ
(漆工芸概説)
 文化財学における漆芸に焦点を当て、漆芸史、技法材料論、保存修復などの観点から漆工芸に対する幅広い知識を身につけることを目的とする。

文化財各論Ⅴ
(文化財の保護と活用-現場担当者から学ぶ文化財行政の最前線-)
 オムニバスによる講義と見学を交えて、文化財の保護と活用について学びます。
 わが国は魅力ある文化芸術資源を豊富に備えており、今後ますますその価値を発信し、経済や地域の活性化につなげることへの期待が増大しています。従来の文化財事業は、国宝・重要文化財などの文化財保護法に基づく保護と活用とが主体でしたが、近年はユネスコ世界遺産や日本遺産など、その概念と対象も拡大してきました。文化財の保護と活用という矛盾をいかに調和・止揚させるかは、まさしく今日的な課題といえるでしょう。
 本講義では、実際の現場や事例に基づいて、文化財行政の最新の取り組みを深く的確に学ぶことで、文化財を活用した地域振興や観光開発に対する社会的要請に応える知識を身につけることを目的とします。

博物館展示論  多岐にわたる博物館業務のなかで、最も主要な機能と役割を果たすのが、展示である。展示は、博物館と他の社会教育施設とを分かつ第一の特質であり、展示なくしては博物館たりえないとも換言できる。資料に対する地道な調査研究と適切な保存管理とがそれを根底から支えていることは言うまでもないが、来館者と博物館との直接的な接点・回路となる場という意味において、展示の果たす社会的役割はきわめて大きいといえよう。本講義では、博物館の展示に関する基礎的な知識から実践的な応用まで、具体的な事例を交えながら紹介し、さまざまな展示の方法論についてレクチャーしていく。