平成18年度春季講演会
装束と甲冑−着方と体験−



  平成18年度文化財学会春季講演は、6月3日土曜日に行われました。今回の講演では「装束と甲冑−着方と体験−」と題し、東京成徳大学助教授でいらっしゃる青蝸イ志先生をお招きしご講演いただきました。

  着方と体験ということで、実際に学生をモデルにし、装束と甲冑を舞台上で説明を交えながら着付けていただきました。着付けは2人1組で行います。前衣紋者と後衣紋者がおり、後衣紋者の指示に前衣紋者が従う形になります。

  まずはじめに、束帯を着付けていただきました。束帯とは奈良時代からの朝服(朝廷出仕の時に着用する服)のことを指します。嵯峨天皇の弘仁時代は唐様式一色でしたが、その後、次第に日本化して服装が大きめのゆったりした服を小さく着こなすのが主流になります。束帯装束の構成は袍(ほう)半臂(はんぴ)・下襲(したがさね)・袙(あこめ)・下袴〔大口ともいう〕・表袴・襪(しとうず)などからなりそれに石帯(せきたい)をつけ、帯剣の者は剣を帯び、平緒を垂げ、頭に冠を被り、足に靴を履きます。

  次に十二単を着付けていただきました。十二単とは、小袖(こそで)の上に袴(はかま)をつけ、単(ひとえ)・袿(うちぎ)を重ね、その上に打衣(うちぎぬ)・表衣(おもてぎぬ)・裳(も)・唐衣(からぎぬ)を着ます。十二単の十二とは、数が多いという意味合いで使われました。この十二単は11〜12枚程あり、全て着ると約15キロにもなります。当時の女性はあまり立ち上がらなかった為、立つように出来ていませんでした。

  最後に甲冑を着付けていただきました。防具の一つで戦闘の際、身体を保護するものをいいます。時代によって違いますが、甲は鎧(よろい)、冑は兜(かぶと)のことをさします。「よろい」は、身体のうちに胴体に着用する防御具の総称で、「かぶと」は頭部の防御具です。鉄・金銅・皮革などでつくられています。甲冑は臑当(すねあて)・佩楯(はいだて)・籠手(こて)・銅丸(どうまる)・面頬(めんぼう)を着ます。最後に大小二振の打刀を腰に差しました。着付けの終わりには火縄銃を持ちました。臑当は膝からくるぶしまでを護る古具足で、籠手とともに上古から用いられています。馬上での戦闘が盛んになると、下脚部の防護のため必要不可欠のものとなりました。立挙(たてあげ)は柔軟に動くようになっていました。

  実際に学生をモデルにし、普段は滅多に見ることが出来ない束帯・十二単・甲冑の着付けを見ることができ、大変有意義な時間を過ごすことができました。やはりただ展示されているものを見るよりも、それぞれの名称や使用目的などを細かく説明していただきながら、実際に着る過程を目にしたほうが興味と実感が沸きました。