平成13年度秋季シンポジウム
建長寺遺跡−その遺構と出土品


 建長寺が創建750年記念事業の一環として、新客殿の建築が計画され、その周囲の発掘調査が実施されました。その発掘調査の主体をなしていたのが本校であり、そこで発掘調査報告と関連研究報告の発表を今回平成13年11月17日土曜日、春季シンポジウムで「建長寺遺跡−その遺構と出土」というタイトルで開催し午前の部、午後の部と二部構成によって行われました。

 午前の部では基調報告として鎌倉考古学研究所所員であり建長寺発掘調査主任の宮田眞先生に「史跡建長寺発掘調査の成果」という論題でご発表頂きました。その中では中世から近現代史までの遺構状況について論及され、特に方丈池、庭園形態の移り変わりが検出できたこと、永年21年(1414年)の大火の際の火事場整理の遺物が池遺構から大量に出土し、その時代の活動の様相を知ることができたこと、1986年の調査と同様に検出遺構と指図の伽藍配置の一部が整合したこと等、今回の発掘の大きな成果を述べておられました。

 午後の部、関連研究報告では、最初に本学非常勤講師であり建築史が御専門である鈴木亘先生に「建長寺伽藍の構成と建築遺構について」という論題でご発表頂きました。先生は建長寺との関連文献を通して、創立期から江戸期までの建長寺伽藍変遷について述べられました。

 次に「玉雲庵址について」という論題で東国歴史考古学研究所所長である田代郁夫先生に御発表頂きました。先生はスライドを用いながら、玉雲庵址の内容や発掘成果を述べられました。

 続いて本学文化財助手である福田誠先生に「漆器の保存処理」という論題で御発表頂きました。先生は、建長寺漆器遺物をラクチトール合浸法による保存処理と鉛玉を用いた埋没法を併せて行った結果について述べられました。



<建長寺遺物>

 最後に工芸史の観点から本学教授である中里寿克先生に「建長寺出土漆器の技法と復元」という論題で御発表頂きました。先生は朱塗椀の歴史を述べられた後、天目椀は本来朱漆を用いるのが普通であるが今回出土された黒天目椀のその名通り、黒漆が用いられているのはめずらしいと論じられました。また、黒天目椀と眉間寺椀との形態の類似性など、建長寺出土椀の特徴について発表されました。

 関連報告後はパネルディスカッションが行われました。そこでは、本学教授の河野眞知郎先生を司会に、発表された先生方とコメンテーターとして今回の発掘調査団団長で本学教授の大三輪龍彦先生に参加して頂き、討論を行いました。発表での疑問、確認できなかったことについて、深く追求する形となり、私達学生にとって探求心をかきたてられるものとなりました。