平成12年春季講演会
紙と考古学


 平成12年6月10日(土)に行われた春季大会では、「紙と考古学」という題で日本考古学協会の平井尚志先生にご講演をいただきました。
 平井先生は紙と考古学という一見すると考古学の分野外とも思われる内容を、たいへん興味深いお話をして下さいました。
 先生は立教大学の経済学部を卒業後、太平洋戦争を経験され、その後大手の紙問屋に就職され、仕事を続ける傍ら考古学を学ばれていたそうです。先生は、まず紙に関する基礎知識をお話して下さいました。
 日本が紙の生産においては世界第2位であるということや、電子メディアの発達した現在においても紙の消費量は以前とまったく変わっていないことなどを指摘されました。そして次に実際に紙と考古学の関係について、紙というものの考古学的な発見をいくつかの事例から指摘されました。
 紙の考古学上での発見は、中国の敦煌で発掘されたものが最古であることや、以前はヨーロッパが起源とされていた紙が実はアジアが起源であることが、考古学の成果によってわかったことなどを指摘されました。最後に、本来考古学の対象外とされてきた紙は、実は考古学においても重要な資料であり、紙そのものを文化財として考えることがこれからは重要になってくると閉められました。
 また、講演終了後には質疑応答が行われました。ここではいくつかの質問が挙げられ、発表が補足され、非常に活発な質疑応答となりました。
 以上、今まで私たちの知らなかった紙の歴史、文化史を教えていただけた、有意義な文化財学会春季大会記念講演でした。